#27 関節可動域テストでサッカー選手のハムストリング損傷を予測できるか? ★最新論文

エビデンス紹介

サッカー選手のハムストリング損傷には低いROM(range of motion,関節可動域)が関係しているという報告が幾つかあります.ROMテストには様々な種類がありますが,どのテストがサッカー選手のハムストリング損傷のリスクを予測できるかはわかっていませんでした.

以下の論文では幾つかのROMテストを行い,どのテストがハムストリング損傷の予測に貢献するかを検討しています.

文献

Predicting Hamstring Strains in Soccer Players Based on ROM: An Analysis From a Gender Perspective, Res Q Exerc Sport, 8, 1-7, 2022
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35394405/

 研究内容

100人のアマチュアサッカー選手(男性56人,女性44人)(スペインリーグ2部,3部)を対象に,6か月間のシーズンで起こったハムストリング損傷を調べています.

ハムストリング損傷は以下の三つを満たしたものです.
・大腿部裏の急性の痛み
・超音波検査での怪我の確認
・7日以上のトレーニングロスを伴う怪我

被験者は6つの柔軟性テスト(股関節および膝関節のROM測定)を行っています.
SLR,IR,ER,ABD,ADDはアクティブ(自動)とパッシブ(他動)の両方を行っています.

straight leg raise (SLR): 股関節ROM・ハムストリングの柔軟性
modified Thomas test (modified TT):股関節屈曲筋(主に大腰筋)の柔軟性
hip internal rotation and external rotation (IR & ER):股関節内旋・外旋のROM
hip abduction and adduction (ABD & ADD):股関節内転・外転のROM
Nachlas test (NT):大腿四頭筋の柔軟性・膝関節のROM
Ridge test (RT):大腿四頭筋の柔軟性・膝関節のROM

【主な結果】
・ハムストリング損傷は26人(女子9人,男子17人)であり,女子サッカー選手は20.5%,男子サッカー選手は30.4%.
・ほとんどのテストにおいて,女子サッカー選手が男子サッカー選手よりROMが有意に大きい(TTとRT以外).
・男女とも,ハムストリング損傷の選手と損傷のない選手間で,SLR(アクティブ,パッシブとも),TT,NT,RTで有意差あり.
・女子サッカー選手の場合はアクティブSLRとTTで,男子サッカー選手の場合はアクティブSLRとアクティブERでハムストリング損傷を予測可能(ロジスティック回帰分析の結果).
・そのモデルの予測正答率(怪我するか否かを当てれるかどうか)は女子サッカー選手で95.5%,男子サッカー選手で94.6%.
まとめ

・アマチュアサッカー選手では,ハムストリング,股関節屈曲筋(大腰筋),大腿四頭筋の柔軟性がハムストリング損傷と関連があると報告されています.
・また,女子サッカー選手ではSLRとTT,男子サッカーではSLRとERでハムストリング損傷を予測可能という結果が得られています.
・カットオフ値などは示されていませんので,基準値はわかりませんが,SLR,TT,ERを測定して,リスクの高い選手を把握し,リスクの高い選手には股関節および膝関節周囲の筋群に対する柔軟性プログラムを実施するのが良いかもしれません.

文責:松田

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