科学・テクノロジー,用具,個人技術,フィジカル,チーム戦術等の向上・発展により,サッカーのレベルも年々あがっているように思われますが,サッカー選手の試合中の身体パフォーマンスや技術パフォーマンスは具体的にどのように変化しているのでしょうか.
2014年に公表された少し前の研究ですが,イングランドプレミアリーグのサッカー選手の身体および技術パフォーマンスが7年間でどのように進化したかを調査した研究がありますので,紹介します.
文献
The evolution of physical and technical performance parameters in the English Premier League, Int J Sports Med, 35(13), 1095-1100, 2014.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25009969/
研究内容
イングランドプレミアリーグ2006/2007シーズンから2012/2013シーズンの7シーズンについて,ゲーム分析をしています.
対象者は合計14,700人になります(シーズン,ポジション,ホーム・アウェーなどの要因を考慮し,ランダムに対象者を抽出しています).
複数カメラのコンピュータトラッキングシステムにより得られたデータを分析に用いています.このトラッキングシステムの妥当性と信頼性は先行研究により担保されています.
90分間プレーした選手のみが対象となっています.
主な結果は以下の通りです(数値は平均値,左:2006/2007シーズン,右:2012/2013シーズン).
【身体パフォーマンス】 増加(有意差あり) ・移動距離(10679m→10881m) ・高強度ランニング距離(890m→1151m) ※高強度ランニング:≧19.8km/h ・高強度ランニングの回数(118回→176回) ・高強度ランニング(ボール有)(373m→478m) ・高強度ランニング(ボール無)(451m→589m) ・スプリント距離(232m→350m) ※スプリント:>25.1km/h ・スプリント回数(31回→57回) ・最高ランニングスピード(9.12m/s→9.55m/s) ※移動距離は比較的同じであるが,高強度ランニングやスプリントの距離は30%~35%増加. 減少(有意差あり) ・平均スプリント距離(6.9m→5.9m) 【技術パフォーマンス】 ※各パフォーマンスの定義の記載はない. 増加(有意差あり) ・パス(25回→35回) ・成功パス(76回→83回) ・ショートパス(6.1回→9.4回) ・ミドルパス(13.4回→19.8回) ・ロングパス(5.7回→6.2回) ・パスレシーブ(18.8回→29.2回) ・ボール保持時のタッチ回数(1.9→2.1) ・ドリブル(0.1回→0.6回) ※ロングパスの増加の効果量(0.11)はショートパスおよびミドルパスの効果量(>0.6)と比べると小さい. 変化なし(有意差なし) ・シュート(1.2回→1.2回) ・タックル(3.2回→3.0回) 減少 ・クリアランス(3.0回→2.3回) ・タックルされた回数(2.8回→2.6回)
まとめ
・イングランドプレミアリーグ2006/2007シーズンから2012/2013シーズンの身体および技術パフォーマンスの変化が明らかになっています.
・高強度ランニングやスプリントに関する項目が増加しているため,全体的にはプレーの強度が上がっていると思われます.
・技術面では,クリアランスが減少し,ロングパスはショートパスおよびミドルパスよりも増加の程度が小さいため,全体的にはパスを細かくつなぐサッカーへの変化があったことが推測されます.
・上記の研究は2012/13シーズンまでの実態です.それ以降の変化もあると思いますので,最新のエビデンスがあれば,また紹介いたします.
文責:松田