コラム#28では,イングランドプレミアリーグのサッカー選手の身体および技術パフォーマンスの変化を調査した研究を紹介しました.コラム#28の研究は2012/13シーズンまでの7年間の変化を検討したため,少し前のデータとなります.世界のサッカーは日々進化し,トレンドも変わるため,2012/13年以降も変化がある可能性があります.それ以降のパフォーマンスについてはどのような変化があるのでしょうか.
最近,2012年から2019年までのラ・リーガにおいて,身体および技術パフォーマンスの変化を調査した研究が発表されましたので,紹介します.ポジション別,順位別の分析も行われています.
今回はラ・リーガなので,プレミアリーグとはサッカーのスタイル・特徴が異なると思いますので,その点も念頭に置いて,読んでいただければと思います.
文献
Evolution of physical and technical parameters in the Spanish LaLiga 2012-2019, Sci Med Footb, 7, 1-6, 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35243954/
研究内容
ラ・リーガの2012/2013~2019/2020の8シーズンを分析しています.
対象はトータルで32,775名の選手です(90分出場した選手のみ).分析にはコンピュータトラッキングシステムが利用されています.
ポジションはセンターバック(CD: central defenders),サイドバック(ED: external defenders),センターハーフ(CM: central midfielders),サイドハーフ(EM: external midfielders),フォワード(F: fowards)に分けられました.
主な結果は以下の通りです(数値は平均値,左:2012/2013シーズン,右:2019/2020シーズン).
【身体パフォーマンス】 増加(有意差あり) ・高強度ランニング距離(523m→555m) ※高強度ランニング:>21.0km/h ・高強度ランニングの回数(29.9回→33.3回) 9.2~14.6%増加 減少(有意差あり) ・総移動距離(10,547m→10,206m) 3.2%減少 【技術パフォーマンス】 増加(有意差あり) ・トータルパス(44.9回→46.5回) ・ロングパス(30m以上)(6.0回→6.6回) ・空中戦(3.1回→3.7回) ・パスの正確性(74.9%→76.1%) ・インターセプト(4.3回→4.8回) 10.0%増加 減少(有意差あり) ・シュート(1.1回→0.9回) ・タックル(1.0回→0.5回) 46.0%減少 ・クリアランス(3.8回→2.2回) 40.8%減少 変化なし ・ショートパス(30m以下)(38.9回→39.9回)
ポジション別,順位別の結果は以下の通りです.
まとめ
・コラム#28のプレミアリーグの分析結果同様,最近のラリーガにおいても高強度ランニングの距離や回数は増えています.現代のサッカー選手には速いスピードで繰り返しランニングできる能力が求められていると考えられます.
・総移動距離は減少しており,コラム#28のプレミアリーグとは異なる結果(プレミアリーグはやや増加)となっています.調査時期やリーグの特徴などが考えられますが,明確な理由は不明です.
・技術パフォーマンスでは,タックルとクリアランスの減少が顕著です.クリアランスの減少から,可能な限り繋ぐサッカーに変化していると思われます.
・ポジション別では,センターバック(CD)のパスに関する項目が増加しています.センターバックにも高いパス能力が必要になってきていると思われます.
・センターハーフ(CM),サイドハーフ(EM)で空中戦が増加しています.今後,中盤の選手にも高い身長,ジャンプ力,ヘディング技術が一層求められるかもしれません.