コラム#28ではイングランドプレミアリーグ,コラム#29ではラ・リーガ(スペインサッカーリーグ)の身体および技術パフォーマンスの変化を紹介しました.
#28や#29のような国内リーグの分析ではなく,ヨーロッパのトップチームが参加するUEFAチャンピオンズリーグにおける技術パフォーマンスの変化を分析した最近の研究(2020年)もありますので,紹介します.
文献
Evolutionary Trends of Players’ Technical Characteristics in the UEFA Champions League, Front Psychol, 16;11:1032, 2020.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32612550/
研究内容
UEFAチャンピオンズリーグにおける技術パフォーマンスの進化を調査することを目的としています.
2009/2010~2017/2018シーズンの1125試合,2489選手(延べ16,247選手)が対象となっています.1試合フルで出場したフィールドプレーヤーが対象です.
データについては,高い信頼性があるwhoscored.comというウェブサイトから入手しています.
19の技術パフォーマンスが評価され,3つのグループに分けられました(①シュート(goal scoring), ②攻撃とパス(attacking and passing), ③守備(defending)).
主な結果は以下の通りです.
※増加,低下は統計的有意差あり.変化なしは統計的有意差なし. ①シュート(goal scoring) ・シュートと枠内シュートは9シーズンで変化なし. ②攻撃とパス(attacking and passing) ・タッチ数,パス,パス正確性 →2009/2010から2010/2011は増加,しばらく変化なし,2016/2017から2017/2018は増加(パスとパス正確性は2015/2016から2016/2017で増加). ・クロスとファウル(受けた回数) →9シーズンで低下 ・スルーパス →2011/2012から2012/2013にかけて低下.その後変化なし. ・空中戦(勝ち) →2011/2012から2012/2013にかけて増加.その後変化なし. ・ドリブル →2009/2010から2016/2017は変化なし.2016/2017から2017/2018にかけて増加. ・キーパス(key pass:ラストパスやクロス),ロングボール,オフサイドは変化なし. ③守備(defending) ・タックル(ボールを取ろうとするアクション) ・ファウル(した回数) ・インターセプト ・クリアランス →9シーズンで低下 ・イエローカード →変化なし. 結論には,「ヨーロッパのチームはクロスを上げるより,パスの頻度と正確性を高めることによってオフェンスのスペースを作り,ゲームをコントロールすることに焦点を当てている」と述べられています.
まとめ
・2009/2010~2017/2018シーズンのUEFAチャンピオンズリーグにおいて,比較的はっきりしている特徴としては以下が挙げられます.
攻撃面:タッチ数,パス,パス正確性は増加,クロスは減少
守備面:タックル,ファウル(した回数),インターセプト,クリアランスが減少
・2017/2018シーズンまでの9シーズンにおいては,概ね,ダイナミックなサッカーというより,パスをつなぐサッカーに移行しているように思われます.
・同じような時期のラリーガをを分析した研究(コラム#29)と比べてみると,インターセプトは反対の傾向を示していますが,全体的な傾向は類似しているように思います.
文責:松田