#35 2030年・未来のサッカーはどうなる?そして,それに向けどのように準備する?

エビデンス紹介

日本サッカー協会の目標2030では,「日本代表チームがワールドカップに出場し続け,2030年までにベスト4に入る」となっています(https://www.jfa.jp/about_jfa/plan/goal2030.html).

上記目標を達成するには,2030年のサッカーをある程度想像しておく必要がありますが,それでは,2030年のサッカーはどのようになっているのでしょうか.また,未来のサッカーに向け,どのようなことを準備しておく必要があるのでしょうか.

そのヒントとなる論説が2020年に公表されています.タイトルは,「Elite football of 2030 will not be the same as that of 2020(2030年のサッカーは2020年と同じでないだろう)」というもので,未来のサッカーを考えるという点では非常に興味深いです.研究ではないため,独自のデータを用いて分析しているわけではありませんが,視点としては参考になると思いますので,ご紹介いたします.

文献

Elite football of 2030 will not be the same as that of 2020: Preparing players, coaches, and support staff for the evolution, Scand J Med Sci Sports, 30(6):962-964, 2020.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32424904/

内容

【2030年までの変化】
○試合数の増加
ヨーロッパのチームでは2008/2009シーズンで約50試合であったのが,徐々に増えており,2018/2019シーズンでは60試合になっている.優れた選手の場合は,フレンドリーマッチや行事的な試合があるため,70試合になるかもしれない.

クラブワールドカップが24チーム開催になるかもしれないし,ワールドカップは2026年から32チームから48チームになるため,ノックアウト方式の試合が増え,エクストラタイムが増えるであろう.

○ゲームスピード(ボールスピード)の増加   
ゲームスピードは,1966年が8.0m/s,2010年が9.2m/sであり,2030年には9.8m/sになるだろう.2010年に比べ,2025年には5%増加,2030年には7%増加するだろう. 
※先行研究の回帰式から2030年の数値を計算.  

○パス回数の増加
パス回数は1966年が10.7回/min,2010年が14.7回/minであり,2030年には16回/minになるだろう.
※先行研究の回帰式から2030年の数値を計算.  

○高強度ランニングの移動距離の増加
イングランドプレミアリーグでは2006/2007シーズンと2012/2013シーズンで高強度ランニングの移動距離は20%程度増加している(年3%程度増加).また,高強度ランニングの回数は50%程度,スプリントの距離は8%程度増加している.高強度ランニングの移動距離は,2012/2013シーズンに比べると,2030年は40%程度増加するだろう.

○怪我のリスクの増加
高強度ランニングやパスやキックの回数が増えることにより,怪我のリスクが高まるかもしれない.

○メンタルの疲労が増加
増加するトレーニングへの専念(コミットメント),より高い課題(タスク)の繰り返し,マスコミへの対応などによりメンタルの疲労を増えるだろう.

【変化に対して何ができるか】
①選手補強      
頑丈な選手,メンタルの回復力がある選手が有利だろう.

②未来の試合に備える必要  
十分な高強度のトレーニングをして,怪我のリスク(特にハムストリングと股関節)を考えたトレーニングプログラムが有用だろう.

③リアルタイムで怪我のリスクをモニターし,評価する.
トラッキングシステム,人工知能を活用したデータが有用だろう.

④効果的なリカバリー方法に焦点を当てる.
ポジションや個別に対応したリカバリーパターンが設定されるべきである.メンタルヘルスの維持も重要だろう.選手の健康を守るため,エビデンスベースな戦略が実施されるべきである.

まとめ

・2030年・未来のサッカーが予測され,今から準備すべきことが述べられています.
・大きな点としては,高強度なプレーの増加と怪我のリスク増加が挙げられると思いますので,育成年代は特にですが,今からその備えをしておく必要があると思います.
・内容の末尾に書かれていますが,今後のトレーニングや怪我予防を考える際には,エビデンスベースな考え方が一層必要になると思われます.

文責:松田

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