相対的な生まれの早さ/遅さが学業やスポーツ成績等にもたらす影響のことを相対年齢効果(Relative Age Effect: RAE)と言います.相対年齢効果は学力,体力,性格特性,スポーツ選手の割合等,様々な点から検討されています.
相対年齢効果についてはJリーガーでも検討されており,Jリーガーには遅生まれ(4月~6月)の選手が多く,早生まれ(1月~3月生まれ)の選手が少ないことがわかっています(内山と丸山,1996).プロサッカー選手の相対年齢効果については,海外でも多く調べられ,多くの研究で相対年齢効果があることが明らかになっています.
それでは,プロサッカー選手の相対年齢効果の程度(明確さ)は日本と他国で違いはあるのでしょうか.
日本を含めた4カ国のプロサッカー選手の相対年齢効果を調べた研究がありますので,紹介いたします.20年以上も前の古い研究ですので,現状を反映しているものではありませんが,参考にしていただければと思います.
文献
The Relative Age Effect in Soccer: Cross-Cultural Evidence for a Systematic Discrimination against Children Born Late in the Competition Year, Sociology of Sport Journal, 16 (1), 54-64, 1999.
研究内容
この研究では,ドイツ,ブラジル,日本,オーストラリアのプロサッカー選手の相対年齢効果を調べています.
被験者は以下の通りです.
いずれの国でも外国人選手は除外され,また,日本ではサテライトチームの選手も含まれています.
・ドイツのプロサッカー選手355人(1995/1996シーズン)
・ブラジルのプロサッカー選手486人(1995/1996シーズン)
・日本のプロサッカー選手360人(1993年シーズン)
・オーストラリアのプロサッカー選手207人(1988/1989シーズン)
・オーストラリアのプロサッカー選手61人(1995/1996シーズン)
cut-off date(学年の基準日)はドイツ,ブラジルが8月,日本が4月,オーストラリア(1988/1989)は1月,オーストラリア(1995/1996)は8月です.
cut-off dateが相対年齢効果に及ぼす影響を見るため,cut-off dateが途中で切り替わったオーストラリアのプロサッカー選手を二つのグループに分け,分析しています.
主な結果は以下の通りです.
いずれの国においても強い相対年齢効果が認められました. ※図で記載があるのみで,割合等の数値は不明. 生まれ月と選手の人数の関係について,以下に示した相関係数が算出されています.相関係数の数値が-1に近いほど,cut-off dateに近い月に生まれた選手が多く,cut-off dateから離れた月に生まれた選手が少ないことを意味します.すなわち,相関係数が-1に近いほど,相対年齢効果が強いと考えられます. ドイツ:r=-0.73 ブラジル:r=-0.53 日本:r=-0.87 オーストラリア(1988/1989):r=-0.76 オーストラリア(1995/1996):r=-0.45 オーストラリアはcut-off dateが1月から8月に切り替わったことに伴い,8月に近い生まれ月の選手が多いという結果になっています. オーストラリア(1995/1996)の選手を古いcut-off date(1月)で分析すると,有意な関係は見られなくなっています(r=-0.08).
まとめ
・20年以上も前の研究となりますが,ドイツ,ブラジル,日本,オーストラリアのプロサッカー選手に相対年齢効果が認められています.
・相関係数を見ると,日本は負の相関が最も大きくなっていますので(r=-0.87),日本の相対年齢効果は他国より強い可能性があります.
・古い研究のため,現状もこの傾向が続いているかは不明ですが(この研究以後,日本を含み,国際比較した研究はほとんどないように思われます),この傾向が続いていたとすれば,日本は他国よりも早生まれの優秀な選手を見落としてきた可能性も考えられます.
文責:松田