#44 プロサッカー選手の相対年齢効果に変化はあるか?~2000/01シーズンと2010/11シーズンの比較~

エビデンス紹介

プロサッカー選手の相対年齢効果については1990年代初めごろから検討され,その後も幾つか報告がされています.

プロサッカー選手の相対年齢効果の存在が明らかになってから何年も経過しているため,相対年齢効果に対する関係者の理解が深まっており,また,国によっては対策が行われているところもあります.そのようなことからすると,相対年齢効果が弱まっている可能性も考えられますが,果たして,どうでしょうか.

少し前の研究になりますが,ヨーロッパのプロサッカー選手を対象に,10年ほど離れた2シーズン(2000/01シーズンと2010/11シーズン)について相対年齢効果を比較し,相対年齢効果に変化があるかを検討した研究がありますので,紹介します.

文献

The relative age effect in European professional soccer: did ten years of research make any difference? J Sports Sci, 30(15):1665-1671, 2012.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23005576/

研究内容

2000/01シーズンと2010/11シーズンのヨーロッパ10カ国の全プロサッカー選手が対象となっています.
対象者数は,2000/01シーズンが合計4,675人,2010/11シーズンが合計4,661人です.外国の選手は除外され,自国の選手のみが対象となっています.

対象国は,イングランド,ポルトガル,ドイツ,ベルギー,オランダ,スペイン,フランス,イタリア,デンマーク,スウェーデンの10カ国です.

選手の誕生日をQ1~Q4の4つの区分に分けています.
2000/01シーズンの選手は区切りの日(cut-off date)が8月に設定されている時に育ってきたので,Q1が8月~10月,Q2が11月~1月,Q3が2月~4月,Q4が5月~7月になっています.
1997年にFIFAがcut-off dateを1月に変更したので,2010/11シーズンの選手は,Q1が1月~3月,Q2が4月~6月,Q3が7月~9月,Q4が10月~12月になっています.
※イングランドのみ,いずれも9月がcut-off dateで分析されています.

主な結果は以下の通りです.

10カ国合計は下図の通りです.
どちらのシーズンもQ1が多く(約30%),Q4が少なくなっており(20%弱),有意な差が認められています.
Q1は2000/01シーズンでは29.3%,2010/11シーズンでは31.9%,Q4は2000/01シーズンでは19.8%,2010/11シーズンでは18.4%となっています.
効果量(差の大きさを示す指標)は2000/01がω=0.14で,2010/11がω=0.20となっています.

国別の結果を見ると,下表の通りです.
「○」はQ1~Q4の割合に有意な差が認められたことを,「n.s」は有意な差がなかったことを示しています.

2000/01シーズンでは,ポルトガル,オランダ,スペイン,スウェーデンにて有意差が認められていません.
一方,2010/11シーズンでは,オランダ,スペイン,スウェーデンにて有意差が認められ,有意差が認められなかったのはポルトガルのみです.

2000/01シーズンにおいて,Q1とQ4の割合の違いが最も大きかったのはフランスで,Q1が34.5%,Q4が18.1%となっています.
2010/11シーズンにおいて,Q1とQ4の割合の違いが最も大きかったのはスウェーデンで,Q1が38.7%,Q4が15.1%になっています.

Q1~Q4の割合の変化について,2000/01シーズンと2010/11シーズンで比較した分析では,ベルギー,デンマーク,イングランド,ドイツ,スペイン,スウェーデンにて有意な差が認められています(相対年齢効果が大きくなったことを意味します).

まとめ

・ヨーロッパ10カ国全体でみると,Q1は2000/01シーズンでは29.3%,2010/11シーズンでは31.9%,Q4は2000/01シーズンでは19.8%,2010/11シーズンでは18.4%となっており,効果量も2010/11シーズンのほうが大きくなっています.すなわち,相対年齢効果は縮小しているというより,若干拡大している傾向があります.
・個別にみても,2000/01シーズンでは相対年齢効果がなかったオランダ,スペイン,スウェーデンにも2010/11シーズンは相対年齢効果が見られています.
・これには1997年にFIFAがcut-off dateを1月に変更したことが影響したのではないかと考えられています.それまでは,多くの国の学校のcut-off dateが1月,サッカーのcut-off dateが8月であったのが,1997年以降,学校とサッカーのcut-off dateがどちらも1月になったため,学校でもサッカーの中でも同じグループの中で過ごし,比較されることが多くなったことが影響したのではないかと考えられています.
・少し前の研究ですので,2010年以降がどのように変化しているかも気になるところです.最新の情報があれば,また紹介いたします.

文責:松田

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