プロサッカー選手に相対年齢効果があることはこれまでのコラムで述べてきました(#33,43,44).
プロサッカー選手に相対年齢効果が存在することの背景には様々な要因がありますが,早生まれと遅生まれの選手間で身体特性が大きく異なる時期からのセレクションも相対年齢効果の一つの要因ではないかと言われています.
それでは,セレクションが行われている育成年代において相対年齢効果は見られるでしょうか.
少し前にフランスで行われた研究になりますが,フランスの国立サッカー養成所(INF: National Institute of Football)にセレクションで入ったジュニアユース年代の選手たちを対象に,相対年齢効果について様々な点から調べた研究がありますので,紹介します.
この研究は誕生月分布と成熟度,形態特性,体力との関係を調べるのがメインの研究ですが,ここでは,相対年齢効果の有無に焦点を当てて,紹介します.
文献
Do anthropometric and fitness characteristics vary according to birth date distribution in elite youth academy soccer players?, Scand J Med Sci Sports, 19(1):3-9., 2009.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19000100/
研究内容
フランスINFに在籍するU-14の160人の選手が対象となっています.1994年~2005年の11年間の選手が対象となっています.
選手を誕生日によりQ1~Q4に分けています.
1996年までは,区切りの日(cut-off date)が8月であったため,Q1が8月~10月,Q2が11月~1月,Q3が2月~4月,Q4が5月~7月になっています.
1997年以降は,FIFAの方針に倣い,cut-off dateが1月に変更されたので,Q1が1月~3月,Q2が4月~6月,Q3が7月~9月,Q4が10月~12月になっています.
結果は以下の通りです.
下図の通り,選手数はQ1が46.9%で最も多く,Q2が30.6%,Q3が16.2%,Q4が6.3%と徐々に少なくなり,有意な差が認められています.
※論文では結果が図で示されているだけで,数値情報が少ない.割合の数値は記載の情報から筆者が算出.
また,卒業後にプロサッカー選手になった割合も調べており,その割合はQ1(n=75)が45.6%, Q2(n=49)が38.8%,Q3(n=26)が43.3%,Q4(n=10)が70.0%となっていました.
なお,U-14サッカー選手の身体特性(身長,体重,体脂肪率)や体力テスト(ジャンプ,スプリント,無酸素パワー,筋力,VO2max)はQ1~Q4間で有意な差は認められていません.
まとめ
・セレクションで選ばれたフランスのエリートU-14サッカー選手に相対年齢効果が認められています.
・Q1,Q2で約77%,Q4は約6%となっており,相対年齢効果が顕著なように思われます.INFは厳しいセレクションをくぐり抜けてきた選手が集まりますので,相対年齢効果が明確になっているように思われます.育成年代の厳しいセレクションがプロサッカー選手まで相対年齢効果が継続する一つの要因なのかもしれません.
・一方,プロサッカー選手になった割合はQ4が70%と他よりも大きな値となっています.この年代において,暦年齢が若いにも関わらず,セレクションをくぐり抜けてきたQ4の選手は将来有望ということなのかもしれません.Q4の対象者数が10名と少なかったため,はっきりとしたことは言えませんが,興味深い結果のように思います.
文責:松田