プロサッカー選手に相対年齢効果があることはこれまでのコラムで紹介してきましたが(#33,43,44),相対年齢効果には男女や競技レベルによる違いはあるのでしょうか.
ドイツの1部,2部,代表といったトップレベルの男女プロサッカー選手を対象に相対年齢効果を調べた研究がありますので,紹介いたします.
文献
Relative Age Effect in Elite German Soccer: Influence of Gender and Competition Level, Front Psychol, 11, 587023, 2021.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33542698/
研究内容
2019/2020シーズン・ドイツの上位2つのリーグでプレーする女子サッカー選手680人と男子サッカー選手1,083人が対象となっています.
代表チームはA代表,U-21男子,U-20男女,U-19男女が分析されています.2015年以降のワールドカップとチャンピオンズリーグの登録選手が分析されています.
選手の誕生日はドイツサッカー連盟のオフィシャルデータから収集されました.
選手の誕生日を4つ(Q1:1月~3月,Q2:4月~6月,Q3:7月~9月,Q4:10月~12月)と2つ(S1:1月~6月,S2:7月~12月)に分け,分析しています.
結果は以下の通りです.
以下の図の通り,男女とも全体では相対年齢効果が見られています.
また,下表の通り,S1 vs S2のオッズ比(=S1/S2)については,U-20を除いて,男子が女子よりも数値が大きくなっています(男子が女子より相対年齢効果が顕著であることを意味します).
競技レベル別では,男子では1部,2部,U-19に相対年齢効果が見られ,女子では2部にて相対年齢効果が見られています(下表の黄色マーカー箇所はQ1~Q4の割合に有意差があったことを示しています).
まとめ
・ドイツプロサッカー選手において,全体では,男女ともに相対年齢効果が見られています.
・S1 vs S2 のオッズ比からすると,男子が女子より相対年齢効果は明確であると考えられます.女子のほうが男子より成熟が早いことや競争レベルが低いこと等が関係しているのではないかと考えられています.
・競技レベル別では,男子は1部,2部,U-19で相対年齢効果が見られていますが,女子では2部のみに相対年齢効果が見られています.女子において2部だけに相対年齢効果が認められたことについての解釈は難しいですが,論文では,2部のほうが1部よりも選手の暦年齢が若いことが関係しているのではないかと考察されています.
・代表においては,データ数が40人程度と少なかったため,有意差が認められなかった可能性もあります(特に男子ではオッズ比がまずまず高い値を示しています).代表選手の場合,データ数が限られているため,仕方がないことと思いますが,データ数が増えれば,結果は異なるのかもしれません.
文責:松田