サッカー選手の相対年齢効果に関する研究は男性を対象としたものが比較的多く,女子サッカー選手を対象とした研究は十分にあるわけではありません.また,女子サッカー選手の相対年齢効果については,研究により結果が異なっており,相対年齢効果の特徴も十分に明らかになっていません.
そのような中で,女子サッカー選手の相対年齢効果について,競技レベルやポジションの違いから検討した研究がありますので,紹介いたします.
文献
The Relative Age Effect in Spanish Female Soccer Players. Influence of the Competitive Level and a Playing Position, J Hum Kinet, 10;46:129-137, 2015.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26240656/
研究内容
2010-2013年におけるスペインの4,035人の女子サッカー選手が対象です(1980年以降に生まれた選手).
対象者は1部(n=936),2部(n=1,711),3部(n=870),ナショナルチーム(n=232, U17,U19,U21,シニア),地域チーム(n=286, U17とU19)の5群に分けられました.
※地域チームはカスティーリャ・イ・リオン州のU17,U19のチームです.詳細な記載はないですが,競技レベルの高い群(ナショナルチームと1部の間)という設定と思われます.
選手の誕生日を4つ(Q1:1月~3月,Q2:4月~6月,Q3:7月~9月,Q4:10月~12月)と2つ(S1:1月~6月,S2:7月~12月)に分け,分析しています.
※Q1~Q4に該当する月に関する記載はないですが,1月がcut-off dateと思われます.
結果は以下の通りです.
ナショナルチーム,地域チーム,1部,2部において,Q1~Q4の割合に有意差が認められています.3部のみ,有意差が認められていません.
S1 vs S2のオッズ比の値はナショナルチーム,地域チーム,1部,2部の順に高値になっていました(すなわち,高い競技レベルほど相対年齢効果が顕著になっていたということです).
※オッズ比の算出方法については記載がなく,不明です.
ポジション差については,地域チームと2部のGKとDFにおいて,S1とS2の割合に有意差が認められました(下表).
※3部のポジションに関するデータは入手できなかったようです.
まとめ
・スペイン女子サッカー選手の相対年齢効果については,ナショナルチーム,地域チーム,1部,2部には相対年齢効果が見られましたが,3部には見られていません.また,競技レベルが高いほど,オッズ比が高くなっていました.すなわち,競技レベルが高くなるほど相対年齢効果が明確になるという結果でした.
・コラム#46のドイツの女子サッカー選手では1部には相対年齢効果が認められず,2部にのみ相対年齢効果が認められており,今回の研究とは傾向が異なっています(国,対象者,対象年,分析方法が異なること等が関係していると思われます).
・相対年齢効果のポジション差については,部分的にですが,GKとDFに認められています.背の高さやフィジカルの強さが要求されるポジションのほうが相対年齢効果が現れやすいのかもしれません.
文責:松田