サッカー選手の相対年齢効果については,男子プロサッカー選手,女子プロサッカー選手,ハイレベルなユース年代の選手など,比較的ハイレベルな選手を対象に研究が行われており,アマチュアのサッカー選手を対象とした研究はそれほど多くありません.
そこで,今回はポルトガルのU-7~U-19年代の一般選手から代表選手までの幅広い年代およびレベルの選手を対象とし,相対年齢効果を検証した研究を紹介いたします.
※この研究では,フットサル選手も対象となっていますが,今回はサッカー選手の結果のみを示します.
文献
Are Soccer and Futsal Affected by the Relative Age Effect? The Portuguese Football Association Case, Front Psychol, 28;12:679476, 2021.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34122274/
研究内容
2019/2020シーズンにポルトガルサッカー連盟に登録していたU-7~U-19の女子サッカー選手5,306人,男子サッカー選手126,285人が対象となっています(ここでは一般選手とします.論文に記載はないですが,年齢からするとほとんどがアマチュア選手と思われます).
U-15からA代表までのポルトガルの各年代の代表選手も分析されています(2016/2017シーズン~2019/2020の代表選手が対象.女子代表選手は367人,男子代表選手は867人).
選手の誕生日を4つ(Q1:1月~3月,Q2:4月~6月,Q3:7月~9月,Q4:10月~12月)に分け,分析しています.
結果は以下の通りです.
下表の通り,一般選手女子ではU-9のみに有意差が認められ(n.s.は「有意差なし」),一般選手男子ではU-7~U-19のいずれの年代にも有意差が認められています.しかし,Q1~Q4の割合の違いはそれほど大きくありません.最もオッズ比が大きかったU-7でも下図の通りで,Q1が27.8%となっています(他の年代でもQ1は25~27%程度).
一方,代表選手の結果は以下の通りです.
下表の通り,女子ではいずれの年代でも有意差は認められていません.A代表では有意差が認められていますが,Q1が10.5%と小さな値で,相対年齢効果とは言えない結果です.
男子ではA代表を除き,U-15~U-21のいずれの年代でも有意差が認められています.最もオッズ比が大きかったU-17の結果は下図の通りです.Q1が53.5%,Q4が4.4%とQ1とQ4の割合に大きな差が見られます.他の年代もQ1は38%~55%程度で,Q1の割合は大きくなっていおり,一般選手の割合と大きく異なっています.
まとめ
・女子一般選手では,U-9に相対年齢効果が見られていますが,その他の年代では相対年齢効果が見られていません.
・女子代表選手では,U-15~U-19,A代表のいずれにも相対年齢効果が見られていません.ポルトガルの女子サッカー選手では,一般選手でも代表選手でも相対年齢効果はほとんどない傾向です.
・男子一般選手では,U-7~U-19の選手において,相対年齢効果が見られています.ただ,一般選手の場合,Q1~Q4の割合に大きな違いはありません(Q1が25~27%程度).
・男子代表選手では,U-15~U-21の選手に相対年齢効果が見られています.アマチュアのQ1~Q4の割合とは大きく異なり,Q1の割合は非常に高い値となっています.代表選手の相対年齢効果は一般選手より顕著と言えます.
・男子のA代表選手では相対年齢効果は見られていません.
文責:松田