#54 バランストレーニングはサッカー選手の足関節の怪我予防に有効か? ★最新システマティックレビュー

エビデンス紹介

サッカー選手に多い怪我の一つに足関節捻挫があります(コラム#19).足関節捻挫は,競技離脱日数が15日ほどあり,再発も多いため,選手個人やチームにとっても痛手となる怪我であり,予防が重要となります.

サッカー選手だけでなく,その他の種目の競技選手にも足関節捻挫は頻繁に起こるため,足関節の怪我予防のためのプログラムはこれまでに多く開発され,効果が検証されてきました.そして,これまでの研究をまとめたシステマティックレビューも幾つか発表されています.しかし,バランストレーニングに焦点を当て,サッカー選手の足関節の怪我に対する効果を検討した研究をまとめたレビューはありませんでした.

そこで,最近,バランストレーニングを含めた怪我予防のためのプログラムがサッカー選手の足関節の怪我に及ぼす影響についてまとめたレビューが発表されましたので,紹介いたします.

文献

Injury prevention programs that include balance training exercises reduce ankle injury rates among soccer players: a systematic review, J Physiother, 2022. Online ahead of print.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35753965/

研究内容

システマティックレビューの書き方を規定したPRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analysis)声明に従って,論文が選出され,レビューが行われました.

サッカー選手を対象とし,バランストレーニングを含めた怪我予防のためのプログラムが足関節の怪我への影響を検討した論文が対象となっています.
最終的に残った論文は2006年~2018年までに公表された9編でした(対象者合計は9,633人).

9編の打ち分けは,介入内容としてFIFA11+を行った論文が5編(FIFA11+が4編,FIFA11+for kidsが1編),FIFA11₊ではないバランストレーニングを含めたプログラムを行った論文が4編となっています(研究によりプログラムは異なります).
各研究の介入頻度は週2~5回,介入期間は2.5~12ヶ月となっています.
※FIFA11₊とは,FIFA Medical Assessment and Research Centre (F-MARC)が作成した外傷・障害予防のウォームアッププログラム.

各論文について,プレー時間当たりの怪我の発生率をプログラム介入群とコントロール群それぞれで算出し,そして,その比(リスク比=介入群の発生率/コントロール群の発生率)を算出しています.
リスク比が0.8であれば,介入により怪我のリスクが0.8まで下がる,つまり20%下がると解釈できます.

結果は以下の通りです.

まとめ

・論文9編をまとめた全体のリスク比は0.64となっており,プログラム介入により足関節の怪我のリスクを36%下げています.介入内容は論文により異なっていますが,バランストレーニングを含めたプログラムが足関節の怪我のリスクを減らすと考えられます.
・FIFA11₊でないプログラムについては,バランストレーニングの内容やバランストレーニング以外の内容が異なるため(筋力トレーニングやプライオメトリクスが入っているものもある),最も効果的なバランストレーニングについて言及することはできません.あくまでもバランストレーニングを含めたプログラムの効果ということになります.
・FIFA11+の介入でも足関節の怪我のリスクを36%下げています.FIFA11+では片足立ちを行う種目が3種目(ボールを持って片足立ち,片足立ちして相手とキャッチボール,片足立ちで相手と押し合い)入っています.FIFA11₊の内容は公表されており,取り組みやすいと思われますので,まずは,FIFA11₊の種目を参考に行うのが良いかもしれません.
・プログラムの効果の性差については,リスク比からすると(男子0.58,女子0.85),男子のほうが効果が大きそうに見えますが,対象となった論文数が少ないため,解釈には注意が必要です.

文責:松田

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