#56 サッカー選手のHQ比はスプリントやジャンプ力と関係があるか? ★最新論文

エビデンス紹介

HQ比(Hamstring-to-Quadriceps ratio, ハムストリングの筋力÷大腿四頭筋の筋力)と前十字靭帯やハムストリング損傷との関係は明らかになっていますが(コラム#17),HQ比と身体パフォーマンス(特にスプリント)との関係は十分に明らかになっていません.

最近,サッカー選手を対象に,HQ比とスプリントやジャンプ力との関係を検討した論文が発表されましたので,紹介いたします.

文献

The Relationship between the Hamstring-to-Quadriceps Ratio and Jumping and Sprinting Abilities of Young Male Soccer Players, Int J Environ Res Public Health, 19(12):7471, 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35742720/

研究内容

トルコのU-18エリートサッカー選手26人が対象となっています(平均18.1歳).

等速性の筋力測定器にて,左右脚の60°/s,120°/s,180°/sの膝関節伸展筋力および膝関節屈曲筋力が測定され,HQ比が算出されました.

身体パフォーマンスとして,カウンタームーブメントジャンプ(CMJ),スクワットジャンプ(SJ),30mスプリント(10mスプリットタイムも含む)が測定されました.

結果は以下の通りです.
「*」の箇所は有意差ありです.

・HQ比(60°/s)と30mスプリントタイムとの間に有意な関係が認められました(r=0.47).
・その他の項目間に有意な関係は認められませんでした.

まとめ

・HQ比とジャンプ力およびスプリントとの関係については,ほとんどの項目に有意な関係はみられませんでした.サッカー選手のHQ比とジャンプ力およびスプリントとの関係性は薄い可能性があります.
・HQ比(60°/s)と唯一関係が認められたのは,30mスプリントタイムで,有意な正の相関が認められています(r=0.47).正の相関ですので,HQ比が小さい方がスプリントが速いということになります.HQ比とスプリントとの関係については,その他の項目を見ても,いずれも正の相関係数となっています.従って,30mまでのスプリントであれば,関係は小さいものの,膝関節伸展筋力(大腿四頭筋)が重要であることを示唆しているのかもしれません.
・また,HQ比とジャンプ力との関係については,先行研究で有意な正の関係が見られたという報告もありますので(Struzik & Pietraszewski, 2019),その他の研究や今後の研究も見ていく必要があると思われます.
・HQ比は測定方法(角速度の違い)により数値が異なりますので(コラム#18),測定方法の違いが研究間の異なる結果を導いているのかもしれません.測定方法に留意して,研究結果を見ていく必要があると思います.

文責:松田

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