#59 サッカーの試合後の冷水浸漬は疲労や身体パフォーマンスの回復を促進するか? ★最新論文

エビデンス紹介

激しい運動後の冷水浸漬は筋肉の損傷及び炎症を軽減することが報告されており,疲労回復戦略の一つに挙げられています.しかし,サッカー試合後の冷水浸漬が中枢性および末梢性疲労(神経筋疲労)に及ぼす影響についての検討は十分でありませんでした.

冷水浸漬がサッカーの試合後(サッカーの試合がシミュレートされた運動後)の神経筋疲労に及ぼす影響に関する論文が公表されましたので,紹介いたします.

文献

Cold Water Immersion Improves the Recovery of Both Central and Peripheral Fatigue Following Simulated Soccer Match-Play, Front Physiol, 15;13:860709, 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36045743/

研究内容

サッカーの試合がシミュレートされた運動後の神経筋疲労の回復に対する冷水浸漬の効果が調べられています.

【方法】
12 人のチュニジアの3部リーグに所属するサッカー選手が対象となっています.

被験者は90 分間のシミュレートされたサッカーの試合を完了した後,冷水浸漬条件(CWI)と常温水浸漬条件 (TWI) を行いました.
冷水浸漬は10 ± 2°C,常温水浸漬は28 ± 2°Cで,下肢全体が確実に浸るような設定で,浸漬時間は10分でした.
サッカーの試合がシミュレートされた運動にはラフバラ間欠シャトルテストが用いられています.

試合前(ベースライン)および試合後 (CWI/TWI の直後(0時間),24時間,48時間, 72 時間の回復まで)において,神経筋疲労および身体パフォーマンスの評価が行われました.

神経筋疲労として末梢疲労 (大腿四頭筋の安静時単収縮力,Qtw,pot) と中枢疲労 (随意的動員度,VA),末梢と中枢の疲労(最大随意収縮力,MVC)が評価されました.
身体パフォーマンスとして,スクワットジャンプ (SJ),カウンタームーブメントジャンプ (CMJ),および 20mスプリントテストが測定されました.
筋肉損傷のバイオマーカー(クレアチンキナーゼ,CK; 乳酸脱水素酵素,LDH) も収集されました.

【結果】
MVC(末梢と中枢の疲労)
CWIは24時間でベースラインに回復.
TWIは72時間でベースラインに回復.

VA(中枢疲労)
CWIは24時間でベースラインに回復.
TWIは48時間でベースラインに回復.

Qtw,pot(末梢疲労)
CWIは24時間でベースラインに回復.
TWIは72時間でベースラインに回復しない.

SJ(スクワットジャンプ)
CWIは72時間でベースラインに回復.
TWIは72時間でベースラインに回復しない.

CMJ
CWIは48時間でベースラインに回復.
TWIは72時間でベースラインに回復しない.

20mスプリント
CWIは24時間でベースラインに回復.
TWIは72時間でベースラインに回復しない.

CK(クレアチンキナーゼ)
CWI,TWIとも72時間でベースラインに回復.

LDH(乳酸脱水素酵素)
CWIは72時間でベースラインに回復.
TWIは72時間でベースラインに回復しない.
まとめ

・サッカー試合後の冷水浸漬は常温水浸漬より,中枢疲労,末梢疲労の両方を減少させ,パフォーマンス指標の完全回復を早めることが明らかになっています.
・特に,サッカー選手のパフォーマンスとして重要なスプリントについては,常温水浸漬では72時間でもベースラインまで回復していないのに対し,冷水浸漬では24時間で回復しており,パフォーマンス回復期間に大きな差があります.
・冷水浸漬はサッカー試合後の疲労回復の戦略の一つと考えてよいでしょう.ただ,トレーニング後の活用はトレーニング適応の低下があるとも言われていますので,トレーニング後の活用は注意が必要と思われます.

文責:松田

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