プライオメトリクスはサッカー選手のフィジカルパフォーマンス向上に有効というエビデンスが多くあります.そのプライオメトリクスには様々な種目がありますが,どの種目が良いかについては実践や経験で語られており,研究として十分に検討されているわけではありません.
プライオメトリクスは垂直方向のジャンプ種目と水平方向のジャンプ種目(前に進むジャンプ)に分けることができます.以下の研究(2015年)では,水平方向のプライオメトリクスと垂直方向のプライオメトリクスのどちらがよいかを検討していますので,紹介します.
Effect of Vertical, Horizontal, and Combined Plyometric Training on Explosive, Balance, and Endurance Performance of Young Soccer Players, J Strength Cond Res, 29(7), 1784-1795, 2015.
被験者は男子サッカー選手40人(10〜14歳)でした.被験者を以下の4つの群に分けています.
①垂直方向のプライオメトリクス実施群(垂直プライオ群)10人
②水平方向のプライオメトリクス実施群(水平プライオ群)10人
③垂直方向と水平方向を組み合わせたプライオメトリクス実施群(垂直+水平プライオ群)10人
④対照群10人
プライオメトリクス実施した①~③群はプライオメトリクスを週2回×6週間しています.種目は以下の通りです.
①垂直プライオ群:片脚垂直ジャンプ,両脚垂直ジャンプ
②水平プライオ群:片脚水平ジャンプ,両脚水平ジャンプ
③垂直+水平プライオ群:片脚垂直ジャンプ,両脚垂直ジャンプ,片脚水平ジャンプ,両脚水平ジャンプ
ジャンプ回数は垂直プライオ群と水平プライオ群は同じですが,垂直+水平プライオ群は他2群より若干少なくなっていました.
プライオメトリクスを実施した3つの群では多くのフィジカルパフォーマンステストが有意に向上していました.その中でも,垂直+水平プライオ群は13項目全てのパフォーマンステスト(ジャンプ,キック,スプリント,方向転換,持久力,バランス能力)で有意な向上が見られ,対照群と有意な差が認められる項目が多くありました.対照群はいずれの項目にも有意な向上は見られませんでした.
また,差の大きさを判定する指標である効果量は垂直プライオ群では垂直方向のジャンプテストであるCMJ(カウンタームーブメントジャンプ)において大きな値を,水平プライオ群では水平方向のジャンプテストである水平CMJとMB5(5回バウンディング)において大きな値を示していました.
垂直方向と水平方向を組み合わせたプライオメトリクスが垂直方向のみ,あるいは,水平方向のみのプライオメトリクスよりサッカー選手のフィジカルパフォーマンスを全体的に向上させるという結果となっています.
[個人的見解]
・サッカー選手のフィジカルパフォーマンスを全体的に向上させるのであれば,垂直方向と水平方向を組み合わせたプライオメトリクスがよいと思われます.
・また,垂直方向のプライオメトリクスを実施すれば垂直方向のパフォーマンステストが向上し,水平方向のプライオメトリクスを実施すれば,水平方向のパフォーマンステストが向上しやすい可能性がありますので,向上させたい能力に合わせて種目を選ぶと良いと思います.
※月刊トレーニングジャーナル2021年6月号に掲載されたものを一部修正しています.
※第4回勉強会(2022年1月19日)にて議論した内容です.
(文責:松田繁樹)