サッカー選手の筋肉の怪我で多いのはハムストリング(腿裏)の肉離れです(Ekstrand et al., 2011).ここでは,ノルディックハムストリングトレーニングという筋力トレーニングがサッカー選手のハムストリングの怪我予防に効果があるかを検証したPetersen et al. (2011)の研究を紹介します.
Petersen J et al. (2011) Preventive effect of eccentric training on acute hamstring injuries in men’s soccer: a cluster-randomized controlled trial. Am J Sports Med, 39(11), 2296-2303.
対象者は男性プロサッカー選手とアマチュアサッカー選手942人(筋トレ群461人,対照群481人)です.対象者数が非常に多い研究となっています.
筋トレ群はシーズン前にノルディックハムストリングトレーニングを10週間(週1回~3回)実施し,その後のシーズン中は週1回実施しています.対照群はそのトレーニングをしていません.
1シーズンにおいてハムストリングの怪我は筋トレ群では15症例,対照群では52症例でした.100人あたりでは,急性ハムストリングの怪我(全体)は筋トレ群3.8人,対照群13.1人,新規の急性ハムストリングの怪我は筋トレ群3.1人,対照群8.1人,再発の急性ハムストリングの怪我は筋トレ群7.1人,対照群45.8人でした(上図,筆者作成).
ノルディックハムストリングトレーニングを行った筋トレ群は対照群よりハムストリングの怪我が少なくなっています.特に再発については大きな違いが出ています.結論としては,ノルディックハムストリングトレーニングがサッカー選手のハムストリングの怪我予防に効果があるという結果が得られています.
【見解】
・サッカー選手のハムストリングの怪我予防にノルディックハムストリングトレーニングを取り入れることは一つの選択肢となるでしょう.
・ノルディックハムストリングエクササイズはハムストリングへの負荷が大きく,急に行うと怪我のリスクがありますので,ウォーミングアップをしっかり行い,トレーニング負荷も徐々に上げていくのがよいでしょう(最初は早めに手を着く等).
・この研究に示されているように,筋力トレーニングは傷害予防効果の側面もありますので,そのことを理解したうえで,サッカー選手は適切な筋力トレーニングを行う必要があります.
文献
Ekstrand J et al. (2011) Epidemiology of muscle injuries in professional football (soccer), Am J Sports Med, 39(6), 1226-1232.
※第2回勉強会(2021年11月24日)にて議論した内容です.
(文責:松田繁樹)