#5 エビデンスベースドサッカートレーニング(Evidence-based soccer training: EBST)とは

エビデンスベースドサッカー

エビデンスベベースド○○(Evidence-based ○○)という言葉を聞いたことがある人も多くいると思います.最近は新型コロナウイルス感染症の問題で政治家も「エビデンス」というワードを頻繁に使用するようになり,その発言がニュースにも取り上げられ,一般の方も「エビデンス」という言葉を耳にする機会が増えていると思います.

エビデンスベベースド○○と言いますと,エビデンスベースドメディシン(Evidence-based medicine),エビデンスベースドプラクティス(Evidence-based practice),エビデンスベースドエデュケーション(Evidence-based education)などという言葉があります.その中で最も有名なものがエビデンスベースドメディシンであり,1990年代に提唱された概念になります.それが他の様々な分野にも波及し,エビデンスベベースド○○という言い方・考え方が広まっています.エビデンス(Evidence)と言うのは「証拠,科学的根拠」といった意味であり,エビデンスベースド(Evidence-based)となると「科学的根拠に基づいた」という意味になり,エビデンスベースドメディシンと言うと「科学的根拠に基づいた医療」ということになります.

この概念が生まれてきた背景としては,医療の分野においてエビデンスベースドメディシンの概念が生まれる前は医師の個人的な経験や慣習に依存していた治療が多く行われていたからになります.医師の経験や慣習ではなく,もっと科学的に検証された研究成果に基づいて医療を行うべきとの考えが広まり,エビデンスベースドメディシンが生まれました.もちろん医師の経験が全く不要というわけではないですが,治療の成功確率を高めるためには,科学的根拠をもとに適切な治療選択をすべきであるという考えが重要とされています.そして,この考えが医療以外の様々な分野にも広まっています.

 それでは,日本サッカー界において,エビデンスベベースドサッカートレーニングという言葉は使われているのでしょうか.私は今までにあまり聞いてことがなく,あまり広まっていないように思います.すなわち,日本サッカー界にはまだこの概念が選手や指導者などのサッカー関係者に浸透していないと思われます.様々な分野において医療と同じような考えが広まり,それぞれの分野における様々な医療,処方などの成功確率が高まってきています.つまり,どの分野においてもエビデンスベベースド(Evidence-based)な考えが必要となっているのです.サッカー界においても,さらに成功確率の高い効果的なトレーニングあるいは指導を行うためにはこの概念が必要になると思います.今後はまさにエビデンスベースドサッカートレーニングの時代になると思いますし,ならなければいけないと思っています.この概念がまだ広まっていない現代の日本サッカー界においては,指導者の経験や感覚,あるいは慣習によってトレーニングが行われることが多いのではないでしょうか(左図).日本サッカー界も他分野と同様,早急にこの概念を取り入れ,トレーニングや指導の質を高めていく必要があります(右図).

※月刊トレーニングジャーナル2020年11月号に掲載されている内容です.

(文責:松田繁樹)

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