日本人サッカー選手に筋力・パワートレーニングが必要であることをクリスティアーノ・ロナウド選手(ポルトガル)を例にして私見を述べたいと思います.
サッカー関係者であれば,得点後に服を脱ぎ,裸になったロナウド選手の身体を見た方も多いのではないでしょうか.とてもひきしまった筋骨隆々な身体であったと思います.ロナウド選手はバロンドール(年間最優秀選手賞)を何度も獲得しており,言うまでもなく,世界トップクラスの選手です.世界トップクラスのサッカー選手にはこのような身体が必要であることを彼の身体と実績が示唆しているように思います.
ロナウド選手は筋力やパワートレーニングをストイックに行っていたことで有名です.ロナウド選手は若いことから注目されていましたが,若い頃は筋骨隆々な身体ではなく,もっと細い身体つきでした.ロナウド選手が身体を強化せず,若い頃のままの身体であれば,彼は世界トップの選手になれたでしょうか.ストイックな補強トレーニングにより強化された身体を獲得したことで若い頃から目立っていた技術・能力をさらに伸ばすことができたように思います.
一方,日本人サッカー選手でも若い頃,「天才」と呼ばれ,将来を期待された選手が何人かいますが,その後それほど伸びなかった選手がいます.ロナウド選手との違いは何でしょうか.もちろん様々な要因があると思いますが,そのような選手の中にはフィジカルの強化が不十分であった人がいるかもしれません.高い競技レベルのサッカーでは高いフィジカルが要求されます.高い競技レベルで活躍するためにすべきことを理解し,ロナウド選手のようなトレーニングを積んでいれば,もしかしたら更なる活躍があったかもしれません.
伸び悩んだ選手に限らず,日本人サッカー選手は全体的に筋力およびパワートレーニングへの意識が低く,筋力およびパワーが不足しているように思います.「インテンシティ」や「デュエル」といった球際の激しさを示すような言葉が日本サッカー界で言われることが多いですが,それを意識だけで改善するには限界があります.
筋力トレーニングやパワートレーニングなどの補強トレーニングによって高い筋力およびパワーを身体に備えることでインテンシティやデュエルを体現することが可能となります.日本サッカー界の筋力およびパワートレーニングへの意識変化が今後必要と感じています.日本人サッカー選手の身体のスタンダードがロナウド選手のようになれば,日本サッカーも世界トップクラスに近づくのではないでしょうか.
※月刊トレーニングジャーナル2020年12月号に掲載された内容を一部修正しています.
(文責:松田繁樹)